2010年4月1日リリース
キングインターナショナル
驚くべき力強さとしなやかさを持つ実力派ピアニスト、原田英代。活動の拠点をヨーロッパにおき高い評価を受けています。前作「チャイコフスキー:四季/ラフマニノフ:コレッリの主題による変奏曲」(AU92569)は、英グラモフォン誌2009年4月号のレビューで大絶賛されました。 最新アルバムはドラマティックな名曲『クライスレリアーナ』を含む、生誕200年を迎えたシューマン・プログラム。ロマンティシズムに溢れた『幻想曲』、美しいニュアンスと特有のメランコリーを持った『アラベスク』、そして『クライスレリアーナ』。全8曲からなるクライスレリアーナは、E.T.A.ホフマンの小説に登場する「楽長クライスラー」から取ったタイトル。文学を音楽的に表現した傑作です。 過度な感傷的表現を避けシューマンの情念的な部分を見事に表した演奏。ピアノの美感を最大限に利用したペダリングによって生み出される精緻な色彩表現、揺れる感情、原田英代の底知れぬパワーを感じさせる1枚です。
レコード芸術
・・・《幻想曲》において示す広やかなスケール感、そしてそれと立派に両立している、こまやかなディテールの積み重ねがもたらす情緒の深さは、まさしく出色のものである。作品の「こころ」をしかりと掴み切った上で、思うさま、彼女は抒情を陳べてゆく。なんと調べの高い《幻想曲》であろう!《クライスレリアーナ》もまた、技術的にも、また内燃する力からも、非常な高みを行く演奏にほかならない。たとえば第1曲では、各声部の音量・音質による弾き分けが効果を挙げ、曲が思いがけぬほど立体的な相貌をおびる。第2曲の抒情もぞんぶんに深く、かつ同じように立体的である。以下、すべてが名演の名に値しよう。
【濱田滋郎】(2010年10月号 特選盤)
レコード芸術
今月はシューマンの《幻想曲》が2種類、それもすばらしい演奏で聴くことができた。一つは内田光子。そしてもう一つが原田英代。ます音がすばらしい。SACDであることを差し引いても、きりっと引き締まり、明るく澄んでいて、強いエネルギーを内包した音は聴き手の心をときめかさずにはおかない。全体の構成ではなく、その音楽が鳴り響いている瞬間が意識される演奏で、新鮮さとインパクトの強さでいえば、間違いなく今月の一番だ。第2楽章の前半は表現の力強さと明快さがすばらしく、前進するテンポが情感の瑞々しさと高揚感をもたらす。後半の「非常に活発に」も最後まで高いテンションとブリリアントな輝きを保ち続け、終楽章は息を潜めた歌がすてきだ。《クライスレリアーナ》はアクセントを強調した個性的な演奏だが、同曲の持つエキセントリックで狂おしい情熱が表現されている。第2曲の途切れ途切れの爪弾きが醸し出す孤独な響きは、ホロヴィッツやアルゲリッチと同じ魂を感じさせる。第3曲は芯の強い音で強拍がしっかり入り、それとアゴーギクの効いた浮遊するような中間部が対比され、時間の流れの違いが意識される。子音が美しく、音の粒立ちが明快。ドイツとロシアの流派の美質が混ざり合っている。
【那須田務】(2010年10月号 特選盤)
読売新聞 サウンズBOX
・・・原田の演奏は内面からわき上がるがごとき情熱の波をそのまま楽器へと伝えるかのように、表現の激しい変転がある。時に個性が強いと感じるが、集中力の高さが説得力を生み、聴き手はぐいぐいと引き込まれてしまう。それでいて、乱暴な響きにならず、全体的に見通しの良い音響になっているのは、高品質な録音のためばかりではない。日本でももっと知られるべき才能だ。
【安田】(2010年10月21日 夕刊)