原田英代
ピアノリサイタル
シューベルト・チクルス
(2003~2010)

シューベルト・チクルスを始めるにあたって(シューベルト・チクルスⅠより)

 ベートーヴェン、モーツァルト、ハイドンと同時代にウィーンに生き、先輩たちを尊敬しながらも独自の音楽を見出し、それを守りつづけた孤高の音楽家シューベルト。その彼を特徴付けているのはなんといっても600曲から作曲された歌曲であった。詩は彼を鼓舞し、言葉は音楽の神秘的な翼を得て、飛翔し始める。そして、メロディーは単に言葉のリズムや抑揚そしてアクセントを表すに留まらず、シューベルトの魔法にかかったテキストは、音楽を通してその内容、背景、意味を一ある時は劇的なまでに一表現されることとなる。交響曲やピアノソナタにも歌謡的な旋律テーマが用いられた時、当時の人々は驚愕したことであろう。シューベルトにおいてはまさに人間の言葉が音楽化されたのだ。このような類稀な彼の創作行為は協奏曲を除くすべてのジャンルに及んだ。今回のチクルスは、ピアニストとしてシューベルトと交わることのできるあらゆる分野の作品を通じて、彼の純粋な魂が語る世界に迫ろうとするものである。

シューベルト・チクルスを終えるにあたって(シューベルト・チクルスⅩより)

 文化人類学者の山口昌男教授が私のシューベルトをお聴きになって、「原田さんのストレンジシューベルトはいいね。是非、シューベルト連続演奏会をやるべきだ。それも、ピアノ曲だけでなく、室内楽と歌曲とに亘るプログラムでね。テーマは『産業革命とシューベルト』だ。」とご発案下さったのは1999年のことでした。このテーマには私も度肝を抜かれ、山口教授ならではのボーダーレスな発想に面喰ったと同時に意欲が湧き、嬉々として取り組み始めたのを思い出します。
 この間、シューベルト・チクルス実行委員会の皆さまをはじめ、多くの方々のご支援のもとに、バリトンのローマン・トレーケル氏、ボロディン弦楽四重奏団、ミハイル・シモニアン氏、イェンス=ペーター・マインツ氏など、多くの共演者を得て連続演奏会が実現できましたことを心から感謝しております。有り難うございました。

2010年9月15日
アスピラート 音楽ホール
2010年9月17日
浜離宮朝日ホール
シューベルト・チクルスⅩ
室内楽の夕べ

ミハイル・シモニアン(ヴァイオリン)
イエンス=ペーター・マインツ(チェロ)

ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調 D574
アルペジョーネ・ソナタ イ短調 D821
ピアノ三重奏曲 第2番 変ホ長調 D929

2008年11月19日
浜離宮朝日ホール
シューベルト・チクルスⅨ

楽興の時 D780
3つのピアノ曲 D946
ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調 D960 遺作

2007年9月30日
浜離宮朝日ホール
シューベルト・チクルスⅧ

ローマン・トレーケル(バリトン)

白鳥の歌 D957(10曲抜粋)

ます D550
漁師気質 D881
月に寄す D296
海の静けさ D216
小人 D771
さすらい人 D489(493)
君こそは憩い D776
夜と夢 D827
水面に歌う D774
魔王 D328

2006年10月1日
アスピラート 音楽ホール
2006年10月12日
浜離宮朝日ホール
シューベルト・チクルスⅦ
室内楽の夕べ

ボロディン弦楽四重奏団
ルーベン・アハロニアン(ヴァイオリン)
アンドレイ・アブラメンコフ(ヴァイオリン)
イーゴリ・ナイディン(ヴィオラ)
ヴァレンティン・ベルリンスキー(チェロ)

志賀信雄(コントラバス)

弦楽四重奏曲 第14番 ニ短調「死と乙女」D810
ピアノ五重奏曲 イ長調「鱒」D667

2006年3月6日
アスピラート 音楽ホール
2006年3月11日
浜離宮朝日ホール
シューベルト・チクルスⅥ
ソナタ&即興曲の夕べ

ピアノ・ソナタ「幻想」ト長調 D894
4つの即興曲 D899
4つの即興曲 D935

2005年6月10日
アスピラート 音楽ホール
2005年6月15日
東京オペラシティ・コンサートホール
シューベルト・チクルスⅤ

ローマン・トレーケル(バリトン)

冬の旅 D911

2004年5月24日
東京文化会館小ホール
シューベルト・チクルスⅣ
ソナタ&幻想曲の夕べ

ピアノ・ソナタ 第13番 イ長調 D664
ピアノ・ソナタ 第14番 イ短調 D784
幻想曲 ハ長調 D605A 《グラーツ幻想曲》
幻想曲 ハ長調 D760 《さすらい人幻想曲》

2004年4月2日
浜離宮朝日ホール
シューベルト・チクルスⅢ

ローマン・トレーケル(バリトン)

美しき水車小屋の娘 D795

2003年2月18日
東京文化会館小ホール
シューベルト・チクルスⅡ

ルミニツァ・ペートレ(ヴァイオリン)
田中雅弘(チェロ)

ピアノ・ソナタ 第7番 変ホ長調 D568
ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第2番 イ短調 D385
ピアノ、ヴァイオリンとチェロのためのトリオ 第1番 変ロ長調 D898

2003年2月8日
東京文化会館小ホール
シューベルト・チクルスⅠ

水野賢司(バリトン)

ヒュッテンブレンナーの主題による13の変奏曲 イ短調 D576
ピアノ・ソナタ 第1番 ホ長調(断章)D157
ピアノ・ソナタ 第6番 イ短調 D537

竪琴弾きⅠ~Ⅲ D478~480
あこがれ D636
馭者クロノスに D369
タルタロスから来た群衆 D583
アンゼルモの墓に D504
さすらい人 D489(493)
魔王 D328